『コレラの時代の愛』のフロレンティーノ・アリーサはキリスト

あの町では本当かどうか分からないことでさえうわさになって広まるというのに、あなたのまわりには女性の影も見えないと言われているけど、あれはどういうことなのと尋ねた。さりげなくそう尋ねられたので、彼は声が震えることもなくこう答え返した。

「君のために童貞を守り通したんだよ」

 それが本当だったとしても、彼女は信じなかったにちがいない。彼のラブ・レターは意味内容ではなく、言葉で人の心を眩惑するような文章で綴られていたからだった。そういうことを言ってくれる心根がうれしかった。(ガルシア・マルケスコレラの時代の愛』p489)

 

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こんなに多くの女を本当に愛することが出来るなんて神以外には出来ないことだろう!

 

しかし私は、それ故に、ガルシア・マルケスは『コレラの時代の愛』の主人公フロレンティーノ・アリーサをキリストとして描いただろうと考えているのだ。

 

ドストエフスキーは『罪と罰』で、ソーニャを両様に読み取れるように描いていると思えるが、マルケスは明らかにフロレンティーノ・アリーサをキリストとして描いている。

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