死と同じくらいに自分ではどうすることも出来なかったーマルケス断章

お前たちの愛は朝の霧 すぐに消えうせる露のようだ。(ホセア書6:4) ドストエフスキーが愛せないと苦しんだ時、そこには死が立ちはだかっていただろう。けれど、私が愛せないと苦しんだのは、そんな高尚なものではなかった。 振り返ると、すぐ目の前に氷…

この死ぬべきものがーマルケス断章

ガルシア・マルケスの初期の作品に『青い犬の目』という短編集がある。この短編集を読んで一番に頭に浮かんだのが、「死」という文字であった。『百年の孤独』に見られるような豊穣さは全く感じられず、硬く、ひたすら「死」について思いつめているような、…

「知る」ということーマルケス断章

ある時、夕食の足しにお総菜のカキフライを買って来た。 娘は食べないので、よそい分けもせずに夫と二人で食べるのにパックのまま出した。 タルタルソースを夫は全部のカキフライにかけて、残ったソースを「もう使わない?」と私に尋ねてきた。それで私は、…

死が立ちはだかっている

罪について、三度(みたび)− ドストエフスキーから

・・。そして、小林秀雄がE・H・カーにならって、『手記』の陰鬱な気分と苛立たしい調子を醸しだした要因としている一八六四年冬の不幸一色の作家の生活が、おそらくそれを補完するものなのだろう。その冬、ドストエフスキーは、肺病で死にかかっていた最初…

『柄谷行人中上健次全対話』からドストエフスキーを考える

本屋で『柄谷行人中上健次全対話』という文庫本を見つけて買って帰り、後ろから前へとちらちら読んで、自分自身について分からないと思っていたことが一つ分かった!と思った。 私は子どもの頃から何故か周りから文学少女だと思われているようなところがあっ…